2026/7/6 公開

この記事は「本当の実力が付く、大人の英語勉強法6つの原則」(2016年公開)の一部を独立させ、再編集したものです。

英語学習のモチベーションを保つ方法 ― 作業興奮と自己決定理論

英語の勉強を続けたいのに、なかなか机に向かえない。そんな悩みを持つ人は多いと思います。英語学習は長い道のりですから、続くかどうかがすべてと言っても過言ではありません。この記事では、私自身がモチベーション(特に座学に対してのそれ)を維持するために役立った「作業興奮」という脳の仕組みと、「自己決定理論(SDT)」という心理学の考え方を紹介します。

英語学習は長い道のりですから、続くかどうかということがとても重要になります。ここでは、私がモチベーション(特に座学に対してのそれ)を維持するために役に立った考え方について紹介します。

作業興奮

やる気というのは勝手に出てくるものではありません。やるから、やる気が出てくるのです。

脳には側坐核という場所があり、ここがやる気をコントロールしています。側坐核に刺激を与えると、やる気が出てきます。ではどうしたら側坐核に刺激を与えられるのか? それは「実際にはじめてみること」です。

どうしてもやる気が出なかったことが、はじめてみたら夢中になってしまった、なんてことはよくありますよね。

ですからアクションを起こしてください。それは本を買ってみるとか、机に向かってみるとか、なんでもいいです。お金を出して少なくともスタートせざるを得なくするというのも一手でしょう。まず無理やりでも3分だけやってみる、とかもいいですね。自分の脳の仕組みを知ってください。やる気がないとアクション起こせないよね、というのが本音であることは分かりますが、認識を逆にしてみてください。はっきりいって思い込みが大事な世界です。

しかし人生これくらいのほうが楽しいですよ
ここまで楽しくならなくてもいいですけど。

モチベーションがないと嘆く人の多くは、自分にがっかりして失望しています。自分は意欲がない、忙しさにかまけて学習も進まない――それは間違いです。

意欲なんてものは最初からあるものではありません。そこに仕組みを用意するかどうかだけです。

ちなみに睡眠不足だとこの仕組みは十分にはたらきません。きちんと寝ましょう。

※ しかし中には、文章を読ませるだけでやる気がモリモリ出てくるという、すばらしい言葉の使い手もいます。現代の魔術師みたいなものです。このような「モチベーション本」を読む、あるいは話を聞くというのもスタートダッシュとしてはおすすめです。しかしあまり頼りすぎないように。内的なモチベーションの方が大事です。詳しくは以下を見てください。

Self Determination Theory(自己決定の理論)

Self Determination Theory(自己決定の理論:SDT)とはEdward L. Deci および Richard M. Ryanによって提唱されたモチベーションに関する理論のことです。

モチベーションには、外部要因から生まれるモチベーションと、内部要因から生まれるモチベーションがあります。英語学習のような長い道のりでは、学習の道のりそのものを楽しめる、学びが楽しい、そういった内的なモチベーションが重要です。道のはるか先にニンジンがぶらさがっているというような目標指向だけではなかなか続きません。外的モチベーションの代表である「ご褒美」は、この内的モチベーションをダメにしてしまうこともある危険なものです。なぜならご褒美は他で代替できてしまうことがあり、また遠すぎるご褒美は現実感が薄いため、大変な努力に対する報酬としては弱いからです。SDTは、この内的なモチベーションが何によって生まれるかを研究した理論です。SDTのコアは以下のようなものです。

作業興奮ほど簡単な話ではありませんが、これを英語学習に応用してみましょう。

Competenceとは、自分には目の前のタスクを達成する十分な能力があると確信している心的態度がモチベーションに大事ということです。従って、タスクは簡単過ぎても難しすぎてもいけません。自分が努力をすれば越えることができる適度な高さの壁を用意することが大事です。タスクは小刻みにしなければなりません。「英語ができるようになる」のような大きすぎる曖昧な目標は持たず、分割された達成可能なタスクに取り組んで、ちょいちょい達成感を得ましょう。そうすると学習そのものが楽しくなってきます。さらに有能感を増幅させるポジティブなフィードバックを受けることが重要とされます。発音を鍛えて手っ取り早く褒められる、みたいなのもそれにあたるかもしれません。

Autonomyとは、その場をコントロールしている意識、自立性のことです。自分の意志で学習をしているのだし、いつでもやめることはできるといった態度のことです。英語学習の全体像を掌握してください。誰かに強制された学習、目標に「縛られすぎた」学習は長続きしません。外からのご褒美も罰も内的モチベーションに対してマイナスにはたらきます。自分の外に頼るのはやめましょう。誰かに言われたからではなく、自分で決断しなければなりません。自分で、自分に必要と思われる、重要で意味のある決断をすることです。

Relatednessとは、他者との関連性のことです。英語ができるようになることで、自分個人を越えたどこかに良いことがあるということです。困っている誰かを助けられる。同僚が助かる。家族が楽になる。親が喜ぶ。あるいはグローバル化する社会で自分が重要な役割を果たす。自分が学んだことを人に教えてあげられる。自分を越えた意味を持つことでモチベーションが高まることが知られています。単に学習仲間がいるから続くわけではありません。自分が何かに貢献できることが大切です。

本当の意味で英語力を伸ばしたいのであれば、必ずどこかの時期で地味な勉強が必要になります。英語の勉強はしたいけど、本に向かうと憂鬱になるので、ついついドラマや英会話など楽しい方に流れてしまう方。それは決して間違いとは言いませんが、しかし「楽しい」とは何でしょうか。楽なことを楽しいと勘違いしていないでしょうか。本来、学ぶことは楽しいことなのです。分からなかったことが分かる、できなかったことができるようになるというのは、本当に興奮させられる素晴らしい体験です。しかし、間違った方法で勉強してしまうと、学ぶことは苦痛になります。ひとたび学ぶことそのものが楽しくてやめられなくなれば、あなたは無敵です。SDTはその大きなヒントになると思います。

作業興奮で最初の一歩を踏み出し、自己決定理論で長く続けられる仕組みを作る。この2つを知っているだけで、英語学習との付き合い方はずいぶん変わるはずです。全体の勉強法の考え方は、まとめ記事もあわせてご覧ください。

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